6月23日の日曜日、【研究者の仕事術ワークショップ:大学院で身につけた専門性を社会に活かすために】が終了しました。多領域の研究分野から14名の大学院生に集まっていただき、それぞれに学びがあったようでよかったです。
このワークショップは、大学院の同期である安斎勇樹さん(東京大学学際情報学府博士課程)と共同で企画・運営している研究者のインタビューウェブサイト「研究者の仕事術」のスピンオフとして企画しました。スピンオフ企画といっても「おまけ」ではなく、サイト立ち上げ前から、このサイトが実現したらこんな実践に展開できる!と妄想していた企画だったので実現して感慨ひとしおです。このワークショップは、研究実践として洗練させていくための評価を行うため、キャリア研究をご専門とされる産業能率大学准教授の荒木淳子さんにご協力いただいています。
ワークショップのテーマは、ヒトコトで言えば、大学院で得た専門性はどのように社会に活かせるか?です。
「研究者の仕事術」サイトでは、研究室にこもって論文執筆をしている「だけではない」先生方にインタビューに行き、社会での実践活動と研究活動の両輪を回す仕事術を語っていただいています。このような先生方の姿から、研究活動にいそしむ大学院生が学びとれることが多くあると思います。私自身、大学院でお世話になった研究室飛び出し系アウトドア派指導教員から修論指導以外に多くのことを学びましたし、修士課程修了後就職する道を選び「大学院で得た専門性は社会にいかに役立てられるか?」と自問自答しています。
ワークショップでは「今取り組んでる研究は一体誰の役に立つのか?」「企業に就職した後、この大学院の経験をどう活かせるのか?」そんなことをみんなでぐるぐる探求してみようという趣旨です。...ワークショップの目的にかけまして!
この日のおやつは、研究と実践の両「輪」ドーナツにしました。◎
(クリスピークリームのミニドーナツ!です。かわいいので是非ワークショップなどで使って下さい。)
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ここでは、私自身の「学びあいの場の観察調査」という、今後のばしたい専門性を活かす意味でも、当日の私のフィールドノーツから、3つの観点の観察記録と考察を簡単にしるします。(ながーくなってしまったので、観察記録(Field NotesとObserver’sComment)を前編、考察を後編でしるします)
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FNその1*共通する想いと多様な研究領域:参加者のバックグラウンドは活動に影響を与える
参加者が集まり、輪になって自己紹介。研究テーマと参加動機を話してもらいました。研究テーマは本当に多様で、「肺」から「法」まで多彩。おもしろかったのは、参加動機です。「院生は孤独なので・・・」、「研究室は領域がとじていて視野が狭いので・・・」、うんうんとうなずく参加者のみなさま。事後アンケートでは、「研究室では話せないこともここでは言えた」という記述もあり、研究室でもなく、所属する学会でもない、第三の場所で、院生のつながりが求められていたんだなと実感しました。この「共通する想い」と「多様な研究領域」という参加者のバックグラウンドが、このあと続くワークショップのメイン活動の要にもなっていたとおもいます。
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FNその2*モードチェンジと場の空気:論理モードから物語モードへ
色んな活動が盛り込まれたワークショップでしたが、まずは、先行事例として「研究者の仕事術」サイトにアップされている、山内先生、佐倉先生、高尾先生のインタビュー記事を「この研究者の研究で喜ぶ人は誰?」などの切り口で読み込み、研究者たちの仕事術をひも解いてもらいました。領域の異なる研究者の研究内容を理解し、さらにその活動スタイルまで切り込むのはなかなか知的にハードな活動だったと思いますが、そこは大学院性の先行事例読み解き力で、切り口を見いだしていっていました。例えば「この人、研究しているのかなあ」とか「実践そのものが研究活動みたいな研究者だね」という鋭い突っ込みもありました。
つぎに、「40歳准教授」という仮の設定で、将来の自分のポートフォリオを妄想で作成し、グループでお互いに即興でインタビューをしてもらいました。私がこの日のワークショップで一番、場のテンションの高揚を感じたのは、このインプロインタビューです。ここまでの活動は、論理的に、記事の読み込みと内容共有をしましたが、ここからは、妄想を物語として語ってもらいます。
参加者からの、BGMを情熱大陸にしてほしい!というリクエストに応えて、情熱大陸を無限リピート。○○大学40歳准教授になりきって語り合っていました。インタビュー中、聞こえてきた声としては「質問するのって難しい!」という声。「研究者の仕事術」ウェブサイトのインタビューでも、いつも、本当に、難しいと感じています。(でも、それが愉しい!)研究者へのインタビューは事前に下調べをしていきますが、今回は下調べなしのインプロインタビューです。
先日読んだ永江朗さんの『インタビュー術!』の中には、次のようにありました。
インタビュアーとしては、相手にバカだと思ってもらうのが一番の得策かもしれない。
「ああこの人には一から十まで一つ一つ説明しないとわからないんだ」と。
今回集まった参加者は多様な研究領域であるので、お互いの研究についてはどしろうと。アタリマエのことですが、研究の専門用語は伝わりません。しろうと同士、聞き手と話し手の即興的なかけあいによって未来のストーリーが創られていっていました。例えば、話し手が予想していない、聞き手の勝手な解釈「それって、○○ってことですか?」によって、意外な方向にストーリーが流れることもあったようです。
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FNその3*ワークショップの後に続く日常
ワークショップ修了後、会場近くのコンビニで嬉しい光景を目にしました。
ワークショップ前は知り合い同士でなかった参加者グループがわきあいあいとお買い物しているではありませんか!ほほえましい。ws終了後当日につくったfacebookページでは、このメンバーで集まってOG会をしたい、第二回をやってください、というコメントがありました。
山内祐平先生は、研究者の仕事術のインタビューの中で、こんなエピソードを語って下さいました。
高校生と科学者のネットワークをつくった研究では、研究を行っていた2年間で関係が終わってしまいました。
そのまま継続するのはとても大変だし、大学は新しいことをどんどんやっていかなきゃならないから…。
それがとても悲しくて、出来れば研究したことがそのまま続けば良いな、とずっと思っていたんです。
今回、Soclaプロジェクトで初めてそれが実現できて、とても嬉しかったです。
実践でできたつながりが研究期間だけで終わってしまうこと、それは応用的領域にいる研究者が常に抱える葛藤のひとつといえると思います。
ワークショップは非日常の場だと言われます。けど、日常があるからこそ非日常があるのであって、非日常が日常につながっていく、そういう持続的なつながりを紡ぐ結び目をとしての場作りを、私は目指したいなあと思いました。
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まずは、Field Notes と、Observer’s Commentまで。
後編では、よりメタな視点での考察を書きたいと思います。
参加者のみなさま、ご協力いただいた、よねざわゆかりさん(ファシリテーター)、結城菜摘さん(DJ & snaps)、
共同企画者の荒木淳子さん、安斎勇樹さん、ありがとうございました*
(後編につづく)