<翻訳>MOOC世界旅行のススメ 〜HarvardXとMITxを肴に〜

万博!

この2年ほど、世界中でOnline学習ブームがきています。
その火付け役はMOOC(Massive Open Online Course 大規模公開オンライン講座)!
私が18歳のときに教育学を学び研究し始めてから、
今、最も世界中が「学習だぜ!学びがあついぜ!」と言っている気がします。

MOOCについて知りたい方は、本記事の下記リンクから、
MOOC研究第一人者重田勝介先生のまとめをどうぞ。
(北海道大学重田勝介先生、情報提供ありがとうございます!)

さて。

MOOCのお陰で、全世界のOnline学習者たちの学習履歴データが
たんまりと公開されるようになりました。
こーんなに多くの人、多様な人が、onlindeで、世界中で、学んでいるのか!
ということをまじまじと考えさせられるデータに出会ったので、今日はそちらを紹介します。

データといっても、小難しいものではなく。
世界地図上にマウスを当てるだけでビジュアル化されるので、
大変見やすく、操作性も面白くなっています。
「なんでこの国が?」「ここどこだっけ?」と考えながらの
MOOC学習者データ分析世界旅行!のススメです。

今回紹介するのは、こちらのサイト。

●EducationXpress
http://www.educationxpress.org/

MITの研究者が中心に運営していて、MOOC関連の最新ニュースをはじめ、
学習に関する使えるリソースや、
MITxやHarvardXのMOOC各コースの詳細なレポートが充実しています。
(サイトを教えてくださった東京大学藤本徹先生、ありがとうございます!)

●Series: xConsortium Series of Course Reports
http://www.educationxpress.org/collection/series
このサイトの中のseriesというところ。
MITxとHarvardX率いる、xコンソーシアムで開講している講義の受講者データなど
コースレポートが蓄積されていくところだそうです。

では早速、MOOC世界旅行へ!
世界地図にマウスを当ててみていきましょう。
http://www.educationxpress.org/collection/series

以下に続く記事内のデータ数値は、
Education Xpress.orgのリンクから引用していますが、
リード文や紹介する国は筆者によるチョイスです。
他にも面白い視点があると思いますのでぜひ教えてください。
※つまり、データは引用ですが、
解釈は翻訳ではなく、筆者の解釈です、ご注意ください。

今回の記事では、HarvardXのデータ分析を
5つの切り口で見ることにします。

(1)登録者数 World map of Enrollment
(2)修了証到達率 Worldwide Certificate Attainment
(3)男女比 World map of gender composition
(4)最終学歴 World map of education composition
(5)年齢 World map of age composition

このHarvardXのデータは2012春〜2013秋に開講された全14コースの総合数値を示しています。
全14コース(2012春〜2013秋開講)
2012秋 2コース
2013春 4コース
2013秋 9コース

(1)登録者数、日本の10倍の国はどこ?
世界の30%強を占める登録者はやはりUSからの登録者。

しかし、アジアからも多くの登録者がいることがわかります。
特にインドは世界の登録者の8.8%をしめ、登録者数は日本の10倍です!
インド人研究者の友人のパワフルさを思い出します。

−日本 11,477名 世界全体の0.9%をしめる登録者数
−インド 112,533名の登録者数、世界全体の8.8%、日本の10倍!

●登録者数分布 2014年5月13日付
1,282,949名の登録者(およそ110万人)
195カ国において

 

(2)修了証達成率、ブルキナファソが高いのはなぜ?
世界中のデータでは、全世界登録者の7.3%の登録者がコース修了証を得ています。
その中でも、西アフリカブルキナファソの高取得率を示す赤色が目立つ!
登録者149名のうち41名、27.5%が修了証を得ている達成率の高さ。

なぜ西アフリカ勢のなかでブルキナファソの修了証取得率が高いのか、
原因までは分かりませんが、どんな仕掛けがあるか気になります。

−日本 登録者5,618名のうち441名、7.8%が修了証を得た。
−ブルキナファソ(Burkina Faso)(西アフリカ)の赤(高取得者数)が一際目立っている!
登録者149名のうち41名、27.5%が修了証を得ている。

●コースの修了証明書到達度 2014年5月18日付
52,234名の修了証明書達成者
7.3%が修了証を得た ※コース完了率とは異なる
160カ国において
(注:国単位でパーセント表示と登録数が示されています。
 登録者の9.5%はIPアドレスを取得できなかった。
 1人が複数の講義に登録している場合、複数回カウントされている。)

 

(3)男女比、世界では4対6。女性が5割を超える国とは?
日本は世界全体の割合の大体にそっています。
−日本 33.9%女性、65.8%男性、0.3%その他

この分布で面白いのは、世界中ほとんどが青や青緑なのに、
ところどころ、緑や黄色が点在しているところ。
緑や黄色=女性の割合が50%程度かそれ以上に高いところを示している。

例えば、中国。
−中国 45.3%女性、54.2%男性、その他0.5%
おとなりのモンゴルでは、男女比が逆転しています。
−モンゴル 56.8%女性、43.0%男性、0.2%その他

さらに女性比率が高い国を探すと…、あった!
−アルメニア 60.9%女性、38.8%男性、0.1%その他
アルメニアでは何が起きているのでしょう??

●登録者の男女比 2014年5月13日付
898,838 登録者数
36.6% 女性
63.2% 男性
195カ国において
(注:100名以上の登録者がいる国に限定している。
 登録者の7.2%は性別に関する報告がなかった。
 %は女性の数値を示している。
 1人が複数の講義を受講している場合は重複しないよう数えている)

 

(4)最終学歴、すぐお隣の国でも異なる状況。
MOOCで学んでいる人たちの最終学歴、気になりますよね。
そして実際、この世界地図が一番色とりどり(各地で色々、文字通り)で面白いと思いました。

特に、アフリカに注目。
アジアは大体、7割程度が学士取得者(大学卒)です。
−日本(5,841名中)
76.5%学士以上、8.9%博士、24.8%修士、42.8%学士、20.6%高卒、2.9%高卒未満
−中国(12,644名中)
77.3%学士以上、5.3%博士、23.3%修士、48.6%学士、19.7%高卒、3.0%高卒未満

西へ進んで、アフリカは色とりどり。
お隣同士の国でも、黄色(学士以上の割合が高い)のと、青(低い)のが並んでいたりします。

−コートジボワール(221名中)
83.3%学士以上、7.7%博士、39.8%修士、35.7%学士、16.3%高卒、0.5%高卒未満
−ガーナ(3,390名中)
58.2%学士以上、0.9%博士、10.0%修士、47.3%学士、40.5%高卒、1.3%高卒未満

onlineで学ぶことがどの程度、しかもどの層に浸透しているか、というのは各国で進度があるようです。
この数値だけで、「えいやー!」でいってしまうと(危険か?)もしかしたら、
コートジボワールは学士以上のアーリーアダプターたちが学んでいる段階で、
ガーナでは登録人数の広まりからして高卒者などの広いニーズに浸透しているのかもしれません。

各国の登録者数の母数が違う(200人だったり1万人だったり)ので、
そこに注意して読み解く必要はありますが、
一見でこのような差が見られるのは面白いと思いました。

●登録者の最終学歴 2014年5月13日付
898,838 登録者数
68.4% 学士以上
195カ国において
(注:100名以上の登録者がいる国に限定している。
 登録者の9.9%については学歴の報告がなかった。
 %は学士以上の学位保有者を示している。
 1人が複数の講義を受講している場合は重複しないよう数えている)

 

(5)年齢層、世界平均は28歳。日本の若者よ、オンラインでHarvardで学ぼう!
日本と中国の登録者の平均年齢に、7歳も差があります。
日本の若者よ、英語でどんどん受講しよう!It’s FREE!

−日本(5,880名)平均31歳
−中国(12,643名)平均24歳
−アメリカ(265,983名)平均31歳

あくまで、平均、なので、若年層と高齢者層の分布は分かりません。
サイトでは、全世界の登録者の年齢分布表が公開されています。
21−25歳が最も多く、その後81歳以上までなだらかに幅広い受講者がいます。
残念ながら日本だけの分布はここだけでは分かりません。

これはMOOCコンテンツをつくる大学関係者たちにとっても気になる情報ではないでしょうか。
日本ではリタイア後の高齢者層の受講者も多いと聞きます。
どんなコンテンツを提供するか、細かいところでは、操作マニュアルの言葉選びなど、気を使いそうです。

●平均年齢
898,838登録者
平均年齢 28歳
195カ国において

以上、
今回はHarvardXの登録者データを見てみました。
次回は、MITxの世界旅行をしたいと思います。
(データの読み方、誤訳など、ありましたら、ご指摘いただけると助かります。@yumiwagatsuma

 

★参考サイト

●EDUCATION XPRESS
http://www.educationxpress.org/
http://www.educationxpress.org/collection/series

●xコンソーシアムにはアジアの大学も入っています。京都大学!
https://www.edx.org/schools-partners

●MOOCsとは何か?
http://edmaps.co/howtouse/whatmoocs-4/trackback/

●MOOCs研究第一人者北海道大学重田勝介先生のわかりやすい解説シリーズ!
【MOOCs-1/3】一流大学の講義を無料受講できるMOOCsとは(1/2)
http://resemom.jp/article/2013/08/27/14954.html

【MOOCs-2/3】誕生の経緯~発展の背景(1/2)
http://resemom.jp/article/2013/08/28/14967.html

【MOOCs-3/3】ビジネスモデルと国内大学の動き、そしてMOOCsへの期待(1/2)
http://resemom.jp/article/2013/08/29/14986.html

 

★ちょっと長めの編集後記
個人的にMOOCの動きに関心を持つようになったのは、
2011-12 Nieman Fellow at Harvardで現在ハーバード大学ニーマン・ジャーナリズム財団役員の
菅谷明子さんにインタビューをさせていただいたことがきっかけです。

「オンラインで得られた知見を教育学の研究に役立てる」
という視点が面白いと思いました。
少し長くなりますが、記事を引用します。全文はこちらから。
記事編集者としてはいいね!頂けると嬉しいです。
研究者の仕事術ウェブサイトより (祝!3周年!)

“日本の大学”が消滅する未来−知的創造の場を目指して  菅谷明子
http://amphibia.jp/archives/202

”edXは、オンラインと物理的キャンパスの学びを、両輪で考えているのが特徴です。オンラインの強みは、キャンパスの学びではフォローしきれない個人個人 の学びのプロセスの履歴が把握でき、そうした貴重な情報を、授業の改良に役立てられることです。オンラインでは、どんな講座が選ばれ、学習教材がどう使わ れ、それが学習者にどう役立ち、実際にどんな学びが起こったのか、という点まで分析が可能で、こうした知見をもとに、オンラインのみならず、物理的なキャ ンパスでの授業をより良くすることに役立てたいと話していました。つまり、オンラインでの学びと、物理空間の学びは、相反するものではなく、お互いに補完 し合うもので、さらにそれぞれの価値を高めて行くためのツールとして位置付けています。 また、オンラインで得られた知見を、教育学の研究に役立てることも目的の一つということです。”

 

♯おまけ♪
アルメニアと聞くとアルメニアン・ダンスのリンクを貼らずにはいられない元オーケストラ部員。
▽アルメニアン・ダンス
https://www.youtube.com/watch?v=1E1Og9UIg_o
▽民族ついでに、ダッタン人のおどり(ティンパニーかっこいい!高1の学際の思い出。)
https://www.youtube.com/watch?v=FsTVF0Fu5_c

 

写真は世界の万博公園@大阪!